ペットボトル症候群をご存じですか?
・熱中症予防にスポーツドリンクを飲む
・炭酸など清涼飲料水が好き
・うちの子はスポーツドリンクをよく飲む
というのならペットボトル症候群に注意が必要かもしれません。
清涼飲料水、スポーツドリンク、エナジードリンク……。大量の砂糖が使われている飲み物がおもな原因のペットボトル症候群。「ある悪循環」により気づかないまま進行してしまうこともあるのです。
これからお伝えする内容を読むと、
- ペットボトル症候群の原因は?
- どんな症状があらわれる?
- 予防するにはどうしたらいいの?
といったことがはっきりとわかります。特に糖尿に気をつけている人こそしっかりと理解してくださいね。
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群は「清涼飲料水ケトーシス」とも呼ばれているもの。
甘い炭酸飲料などの清涼飲料水やスポーツドリンクを習慣的にたくさん飲むことで、糖分の摂りすぎになって、腹痛、嘔吐、意識レベルの低下、といった症状があらわれるものです。
10代から30代の男性に起こりやすい傾向があります。
それまでまったく不調のなかった10代の若者が突然発症することもあれば、小学生が発症することもあります。
糖尿病とも関係が深いペットボトル症候群ですが、糖尿病の人だけがなりやすいということではありません。
自分では気づいていなくても「糖尿の傾向がある人」がなりやすいのです。
ペットボトル症候群の原因とは?
まずはペットボトル症候群の原因について。
原因は習慣的な糖分のとりすぎ
ペットボトル症候群の原因は、清涼飲料水やスポーツドリンクなどを習慣的に飲みすぎること。
清涼飲料水にはペットボトル1本(500ml)に30~50グラムの糖分が含まれているものが多くあります。
コーヒーなどに使うスティックシュガー、ありますよね?最近は細いタイプが主流で1袋に3gの砂糖が入っています。
このスティックシュガー10本~15本分もの砂糖がペットボトル1本に入っている、ということですね。
たまに飲む程度ならいいのですが、ほぼ毎日1リットル、1.5リットルと飲んでいると糖分の摂りすぎとなってペットボトル症候群を発症してしまうのです。
ペットボトル症候群のメカニズム
清涼飲料水の飲みすぎがどのようにペットボトル症候群につながるのでしょうか?
ちょっとややこしいですが、わかりやすくお伝えしますね。
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甘い清涼飲料水やスポーツドリンクなど飲みすぎると血糖値があがる
↓
血糖値があがると血液が濃くなるので、薄めるために体内の水分を使って尿として出す
↓
体内の水分が減ったので、のどが渇いて、また清涼飲料水を飲む
↓
また血糖値があがって、体内の水分を使って尿として出す
↓
体内の水分が減って、またのどが渇いて、また清涼飲料水を飲む
↓
次から次へと入ってくる大量の糖分をエネルギーに変えるためのインスリン分泌作業が追いつかなくなって、膵臓(すいぞう)が疲れ切ってしまう
↓
インスリンを十分に分泌できなくなる
↓
糖分をエネルギーに変えられないので、体内の脂肪を分解してエネルギーに変えようする
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脂肪をエネルギーに変えてくれるならいいんじゃない?脂肪が燃焼するんだもん!
なんて勘違いしそうですが……
ペットボトル症候群が問題なのはここからです。
じっくりと読み進めていってください。
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脂肪を燃焼する時に「ケトン体」というものが作られる
↓
膵臓(すいぞう)が疲弊して糖分をエネルギーに変えられない非常事態なので、糖分の代わりに燃焼させる脂肪の量もぐんと多くなって「ケトン体」の量もぐんと多くなる。
↓
ケトン体(酸性物質)が体内にどんどん溜まっていく
↓
血液が酸性になってしまう(血液は通常は弱アルカリ性)
↓
倦怠感、腹痛、吐き気、嘔吐、意識がもうろうとする、といったペットボトル症候群の症状を引き起こしてしまう
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これがペットボトル症候群が起こるメカニズムです。
清涼飲料水を飲んで、血糖値があがって、尿が増えて、のどが渇いて、また清涼飲料水を飲む。という悪循環。
また、
血糖値があがっているのに、インスリンが十分出ないために、体は「糖が足りない」と勘違いして血糖値を上げようとする悪循環。
こうして気がつかないうちに糖尿の傾向が強まっていったり、ペットボトル症候群が近づいてきたりするのです。
甘い食べ物もペットボトル症候群の原因に
ケーキやプリン、甘いお菓子、果物の缶詰など、糖分の多い甘い食べ物の食べすぎもペットボトル症候群の原因となります。
ショートケーキ1切れに30グラムの砂糖。プリン1つに15グラムの砂糖。これに清涼飲料水が加わると全体としての糖分はさらに増加します。
ペットボトル症候群の原因は「清涼飲料水の飲みすぎ」ではなくあくまでも「糖分の摂りすぎ」。
糖分が飲み物に入っていても食べ物に入っていても同じ。ふだんの食生活の見直しが必要ですね。
どんな人がなりやすい?
ペットボトル症候群になりやすい人とはどんな人なのでしょうか?
- 毎日のように甘い清涼飲料水を1リットル以上飲んでいる
- 熱中症予防にと、毎日のようにスポーツドリンクを飲んでいる
- 毎日のようにエナジードリンクを飲んでいる
- 糖尿病である
- 糖尿の傾向がある
- 10代~30代の男性
甘い炭酸飲料などの清涼飲料水だけでなく、スポーツドリンク(イオン系飲料)やエナジードリンクにも注意が必要。
つい甘い清涼飲料水を飲む人。運動後や熱中症予防にスポーツドリンクを飲む人。疲労回復にとエナジードリンクを飲むビジネスマン。ペットボトル症候群に注意が必要ですね。
また10代~30代というのは、体質的な原因よりは「清涼飲料水をよく飲む年代」という点。女性よりも男性のほうが清涼飲料水をたくさん飲む傾向があります。
夏場など部活動やサッカークラブなどの練習で、お子さんがスポーツドリンクを飲むことも多いでしょう。
糖分の少ないものを選ぶ、薄めて飲む、麦茶などノンカフェインの飲み物も取り入れる、といった工夫をしましょう。
では次に、ペットボトル症候群の症状についてお伝えします。
ペットボトル症候群の症状
ペットボトル症候群の症状は、
- のどが非常に渇く
- 尿の量が増える、尿の回数が増える
- 体がだるいなどの倦怠感
- 腹痛、吐き気、嘔吐
- 精神的にイライラする
といったものが現れます。さらに進むと、
- 血圧がさがる
- 脈拍が早くなる
- 意識がもうろうとする
- 昏睡状態におちいる
といった状態にもなりかねません。
軽い症状のうちにペットボトル症候群のリスクを下げるよう、甘い飲み物や食べ物を控えるように心がけましょう。
※参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」、「糖尿病とこころ」、「嗜好飲料」
では最後に、ペットボトル症候群にならないためにどんなことに気をつけたらいいのか、についてお伝えします。
ペットボトル症候群にならないためには
ペットボトル症候群にならないためには、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
砂糖は1日に25グラムまで
WHOの指針によると、大人の1日の砂糖の摂取量は25グラムまでが望ましいとのこと。
500ml入りの清涼飲料水ペットボトル1本に砂糖が30グラム~50グラム入っているということは、すでに糖分の摂りすぎ。
1日1リットル飲む人は100グラムの砂糖を食べていることになりかねません。
食べ物・飲み物に含まれる砂糖の量は?
身近な飲み物や食べ物にどのくらい砂糖が入っているのか、目安をお伝えします。
- 1日の砂糖の摂取量(WHO指針):25グラム
- 清涼飲料水500ml
→ 30~50グラム - エナジードリンク500ml
→50グラム - 砂糖入りレモンティ500ml
→25グラム - カフェの甘いコーヒー1杯
→25グラム - ショートケーキ
→30グラム - シュークリーム
→15グラム - プリン
→15グラム - 大福
→10グラム
スティックシュガー1本が3グラムなので……
エナジードリンクには16本分、
カフェの甘いコーヒーには8本分、
ショートケーキには10本分。
冷たい飲み物やもともと苦いコーヒーなどは甘さを感じにくくなるので、実際には思っていたよりもはるかに大量の砂糖が使われています。
何も口にできなくなってしまいそうな数字ですが……(汗)、見えないところで意外とたくさんの砂糖を食べているのが現実なのですね。
ペットボトル症候群の6つの予防法
ペットボトル症候群を予防するために次のようなことに気をつけてはいかがでしょうか。
- 清涼飲料水を水やお茶に変える
- スポーツドリンクは糖分の少ないものを選ぶ
- スポーツドリンクを薄めて飲む
- 缶コーヒーも甘いものを避ける
- 熱中症対策には塩分補給とお水やお茶で
- 甘い食べ物を食べ過ぎない
スポーツドリンクはあくまで「運動した時の栄養補給」が目的で「熱中症予防」が目的ではありません。
熱中症予防にとスポーツドリンクばかり飲むのはペットボトル症候群のリスクを高めます。気をつけてくださいね。
ペットボトル症候群:まとめ
ペットボトル症候群とは? その原因・症状・予防法についてお伝えしました。
ペットボトル症候群とは:甘い清涼飲料水やスポーツドリンクの飲みすぎが糖分の摂りすぎとなって体に症状があらわれるもの。
原因:糖分の摂りすぎで血糖値が上がり、膵臓(すいぞう)が疲弊して、ケトン体が増加して、弱アルカリ性である血液が酸性になってしまうこと。
症状:のどが異常に渇く、尿が増える、倦怠感、腹痛、吐き気、イライラ、血圧の低下、脈拍数の増加、意識がもうろうとする。
なりやすい人:清涼飲料水をほぼ毎日たくさん飲む人(同様にスポーツドリンクやエナジードリンクなども)、糖尿病や糖尿の傾向がある人、10代~30代の男性。
予防法:糖分を控える(砂糖は1日25gまで)、清涼飲料水をお茶に代える、甘い缶コーヒーも控える、熱中症対策には塩分補給とお水やお茶にする
ペットボトル症候群の予防の基本は甘いものを摂りすぎないこと。予防するためには糖分の摂りすぎに気をつけるしかありません。
ふだんの飲み物・食べ物を見直して、できるところから糖分の量を減らしてみてくださいね。