不溶性食物繊維といえば繊維質の食べ物に多い栄養素。「便秘解消に効果的」というイメージかもしれません。でもそれはほんの一面。
不溶性と水溶性の2種類に分かれる食物繊維。どちらもさまざまな効果を発揮して、私たちの健康を守ってくれています。
これから紹介する内容を読んでいただくと、
- 不溶性食物繊維と水溶性食物繊維はなにが違う?
- 不溶性食物繊維のすごい3つの効果は?
- 不溶性食物繊維の多い食べ物には何がある?
が手に取るようにわかります。今日から不溶性食物繊維の健康効果をしっかりと取り入れましょう。
【関連記事】不溶性食物繊維の多い食べ物ランキング75-摂取量や効果も
【関連記事】水溶性食物繊維の多い食べ物ランキング75-摂取量や効果も!
食物繊維とは?
食物繊維とは炭水化物のなかに含まれている成分のひとつで、私たちの体では消化も吸収もできない成分のこと。胃や腸で消化されることもなく、消化器系を通り過ぎて便となって排出されていきます。
食物繊維は、便のカサを増やす、お通じをよくする、といったはたらきだけと思われていましたが、そのほかにも健康効果が次々と明らかに。今では「第6の栄養素」と呼ばれるほど重要な成分となりました。
不溶性と水溶性の違い
食物繊維は不溶性と水溶性の2種類に分かれます。その効果も違えば、どんな食べ物に多く含まれているのかも違います。
では不溶性と水溶性のちがいについて簡単に説明します。
不溶性食物繊維
食物繊維といわれてイメージするのはこちらではないでしょうか。
ポソポソ、ザラザラした食感で、玄米、全粒粉、きのこ類、ごぼう、れんこん、といったいわゆる「繊維質」というイメージの食べ物に多く含まれています。
水に溶けず、腸の中で水分を吸って数倍にも数十倍にも大きくふくらんで腸を刺激。腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にしてお通じをスムーズにしてくれます。
水溶性食物繊維
こちらはネバネバ、サラサラした食感。がごめ昆布やもずくの「トロ~ッ」とした部分がまさにそう。果物にはサラサラ系の水溶性食物繊維が多く含まれています。
体内で水に溶けてゼリー状になって腸をゆっくりと進みます。
腸の中で善玉菌のエサとなって腸内環境を整えたり、血糖値の上昇をおさえたり、コレステロールや中性脂肪をからめとってそのまま排出したりと、健康効果が満載です。
水溶性食物繊維の多い食べ物や効果について別の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。
→ 水溶性食物繊維のすごい6つの効果と多い食べ物とは?
私たちは食物繊維不足
和食中心の食生活をしていた頃は、1日に30gほど食物繊維を摂取できていた時期もありました。それが欧米型の食生活へと変化するにつれ、摂取量はぐんぐんと減少。
1日の摂取量の目標は、成人の男性なら21g、成人の女性なら18g。でも実際は2013年の調査ではたったの14g。目標の7割程度しか摂れていません。
※参考サイト:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」、国立健康・栄養研究所「主な健康指標の経年変化:栄養摂取状況調査」
朝食に具だくさんのお味噌汁、玄米や雑穀米、焼き魚、小松菜のおひたしやひじきの煮物、といったものを食べている人は、昼も夜もバランスのとれた食事で食物繊維は十分とれているでしょう。
でも、昨日の食事はいかがでしたか?
玄米や雑穀米は食べました?野菜はどのくらい?果物は?豆類は?海藻は?
食生活によっては目標の半分にも満たないかもしれません。
日本人に不足しがちな食物繊維。でもそこには私たち現代人にうれしいはたらきが満載。
そこでまずは不溶性食物繊維の3つの健康効果についてわかりやすくお伝えします。
不溶性食物繊維の効果(1) 便秘の解消
不溶性食物繊維には便秘を解消する効果があります。
不溶性食物繊維は水に溶けずに胃や腸で水分を吸収して数倍から数十倍に大きくふくらみます。大きくふくらんだ食物繊維が腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にすることで、お通じを促進してくれます。
大きくふくらんで便のカサが増えるので、お腹のなかで便が長時間滞在することなく、スムーズに排便できる効果があるのです。つまりは便秘の解消に期待大ということですね。
便秘のタイプによっては、不溶性食物繊維の摂りすぎが便秘をひどくする可能性があります。不溶性がきくタイプの便秘と水溶性がきくタイプの便秘、それぞれ紹介します。
不溶性食物繊維が効果的な便秘
- 便が少ない
- 便の回数が少ない
- 排便のあとがすっきりしない
便の量が少ないために便がなかなか進まない状態の便秘です。便のカサを増やしてくれる不溶性食物繊維の多い食べ物と水分をしっかり摂りましょう。
水溶性食物繊維が効果的な便秘
- 便が固い、便がコロコロとしている
- いきまないと出ない
- ストレスが多い
- 便秘や下痢をくりかえす
- お腹が張ることが多い
- お腹がごろごろ鳴る
便の水分が少なくなって固くなっている状態の便秘です。便をやわらかくする水溶性食物繊維と水分をしっかり摂りましょう。
不溶性食物繊維を摂らないほうがいい便秘
不溶性食物繊維を摂ることでかえって便秘がひどくなるケース があります。
- 腸のはたらきが弱っている。
- お腹が張る。ガスがよく出る。
- 運動がかなり不足している(寝たきりなど)
- ストレスが多い
- 生活の乱れ(食生活、運動不足、睡眠不足)
このような便秘の人は便のカサが少ないのではなく、便の水分が減って固くなっている状態。いわば「固い便が腸をフタしている状態」です。
ここへ不溶性食物繊維が入ってきて水分を吸って膨らんでも、フタをしている便があって前へ進めずに、さらにお腹の中でガスが発生したりお腹のハリ(膨満感)に苦しくなって、便秘は解消されません。
食べ物には水溶性も不溶性もどちらも含まれています。水溶性食物繊維の多い食べ物を食べてもそこには不溶性食物繊維もちゃんと含まれています。
あきらかに「便の量が少ない」という人以外は水溶性食物繊維を摂るように気をつけましょう。
便秘のタイプ別、摂るべき食物繊維についてはこちらでくわしく紹介しています。
便秘に食物繊維は逆効果?便秘のタイプ別、摂るべき食物繊維とは
不溶性食物繊維の効果(2) 有害物質を排出する
不溶性食物繊維には有害物質を排出するデトックス効果があります。
身のまわりの食べ物には食品添加物が使われていたり、残留農薬があったり、ダイオキシンや水銀といった重金属が含まれているものが少なくありません。
身のまわりの生活用品にも合成の界面活性剤を代表とする化学物質が含まれているものばかり。
シャンプー、リンス、スタイリング剤、食器洗剤、衣類の洗剤、掃除用の洗剤、芳香剤、シュシュッとひと吹き消臭剤……。
これらは肌から体内に吸収される「経皮毒」とも呼ばれ、排出されにくい傾向があるとか。アトピー・花粉症・ぜんそくなどのアレルギーの大きな原因にもなっています。
不溶性食物繊維には体に有害な物質を吸着して便と一緒に排出してくれるはたらきがあります。
すべての有害物質とまで言いませんが、重金属、食品添加物、発がん性が懸念されるダイオキシンなどの有害物質を排出してくれるので、大腸がんのリスクを減らす効果も期待されています。
また有害物質だけでなく残り物も吸着して排出されるので、腸をキレイに掃除するはたらきもあるのです。
デトックスには大量の酵素が必要
有害物質を体からデトックスするためには大量の酵素が必要となります。
酵素には限りがあり、酵素がなくなると命は終わりを迎えます。不溶性食物繊維がじゅうぶんにあれば、大量の酵素をムダ使いすることも防げるでしょう。
ちなみに私たちが紹介している健康食品『野菜力で輝け』も野菜が持つDetoxパワーが凝縮!「毎朝スッキリ!」「春が憂うつじゃなくなった!」とうれしい声もたくさん!一度チェックしてみてください → 野菜力で輝け
不溶性食物繊維の効果(3) ダイエット
不溶性食物繊維にはダイエット効果も期待できます。
不溶性食物繊維は胃や腸で水を吸収して数倍から数十倍にまでふくらみます。カサが増えるということで少ない量でも満腹感が得られて、食べすぎをおさえることができます。
また繊維質なので自然とよく噛んで食べるようになります。よく噛めばそれだけゆっくり食べることにもなりますので、満腹中枢が刺激されて満腹感を得られるようになりますね。
腸のお掃除役でもある不溶性食物繊維。満腹感が長続きして腸の中もキレイになることで、ダイエットにも効果的にはたらくのです。
※参考サイト:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」、農林水産省「ビタミンと食物繊維」、NHK健康チャンネル「食物繊維をとりすぎると便秘が悪化!?」
では次に不溶性食物繊維の多い食べ物は何か、具体的にお伝えします。
不溶性食物繊維の多い食べ物とは?
食べ物には不溶性も水溶性もどちらも含まれています。そのなかで日本人に比較的不足しているのは水溶性食物繊維。
なので「水溶性食物繊維の多い食べ物を食べよう!」と気をつけていれば、自然と不溶性食物繊維も摂れることになります。
もちろん便の量が少ない便秘の人や便の回数が少ない便秘の人は、意識して不溶性食物繊維を摂ることが大切です。
逆に、便が固い、いきまないと出ない、ストレスが多い、お腹がゴロゴロ鳴る、といった便秘の人は不溶性食物繊維の摂りすぎに注意が必要。
では身近な食べ物から1食分あたりに換算して、不溶性食物繊維の多い食べ物を順に紹介します。
日本人は食物繊維が1日あたり6g不足していることを頭に置きながら読み進めていってください。
野菜
野菜で不溶性食物繊維が多いものは、ブロッコリー、枝豆、さといも、オクラ、かぼちゃ、にんじん、切り干し大根、さつまいも、大根の葉、れんこん、キャベツ。
※参考サイト:文部科学省「食品成分データベース」
ブロッコリーの温野菜100g(1/3株)で5.1gも補えます。
また枝豆も繊維がぎっしり。冷凍の枝豆130gを解凍したもの(可食部は65g:小皿一盛りほど)に、4.75gも含まれています(枝豆は分類上「野菜」です)。
不溶性食物繊維の多い野菜やその含有量について別の記事でまとめています。あわせてご覧ください。
→ 不溶性食物繊維の多い野菜ランキング15【1食分で比較】摂取量や効果も!
果物
果物では、干し柿、干しいちじく、柿、ラズベリー、アボカド、パイナップル、りんご、いちご、グリーンキウイ。
干し柿は2個(50g)に不溶性食物繊維が6.35gと食べ物の中でダントツ1位!
ラズベリーも冷凍ものを活用できますし、カプサイシンの3倍の脂肪燃焼効果でダイエットにも最適。
グリーンキウイは凝縮された酵素が消化を促進して腸内環境を改善!夜寝る1時間前のキウイが効果テキメンです。
不溶性食物繊維の多い果物や含有量は別の記事でまとめています。あわせてご覧ください。
→ 不溶性食物繊維の多い果物ランキング15【1食分あたり】摂取量や効果も!
きのこ類
きのこ類も不溶性食物繊維が豊富な食べ物。エリンギ、えのき、しめじ、しいたけ、まいたけ、なめこ、きくらげがおすすめです。
豆
豆類では、おから、花豆、大豆、落花生、おからパウダー、納豆、きなこ。
大豆の煮豆の小鉢(50g)に不溶性食物繊維は3.2g。水溶性も合わせて4.3gも摂ることができます。
落花生も豊富で、30粒(30g)に不溶性食物繊維は2.94g。
そしておすすめが おからパウダー。おかずにお味噌汁にコーヒーにサッとふりかけるだけ。常温保存だからボトルに入れて持ち歩けます。
たった大さじ1杯(6g)に不溶性食物繊維が2.53g。朝晩と大さじ1杯ずつで不足分がほぼ補えます。
食物繊維の多い豆とその含有量は別の記事でまとめています。あわせてご覧ください。
→ 食物繊維の多い豆とは?1食分で比較-摂取量や効果も!
穀物類
穀物(米・麦)では、玄米ごはん、オートミール粥、押し麦ごはん、もち麦ごはん。
お茶碗1杯分の不溶性食物繊維の量で見ると、玄米は1.92g、オートミール粥もほぼ同じ、押し麦ごはんが1.46g、もち麦ごはんは1.23gです。
※押し麦ごはんももち麦ごはんも、白米150gに麦50gの割合で混ぜて炊いたうちの、お茶碗1杯に含まれる不溶性食物繊維の量です。
水溶性を加えた食物繊維の合計で見ると、どれもお茶碗2杯で5gほどの食物繊維を摂ることができます。水溶性を摂りたい場合はもち麦ごはんがいいですね。
*-*-*-*-*
不溶性食物繊維は健康効果の高い栄養素ではありますが、便秘のタイプによっては摂りすぎないほうがいい人もいます。
また、一緒に水分をしっかりと摂るように気をつけてください。
不溶性食物繊維の多い食べ物と3つの効果:まとめ
不溶性食物繊維とはなにか、3つの健康効果、そして不溶性食物繊維の多い食べ物についてお伝えしました。
不溶性食物繊維が有害物質をデトックスして私たちの体を守っていること、便秘の解消に効果的ではあるものの逆効果になってしまうケースもあること、おわかりいただけたと思います。
毎日の食生活に不溶性食物繊維の多い食べ物を取り入れていきましょう。