鉄分は女性にとって身近な栄養素で、男性よりも女性に不足がちな傾向があります。
生理痛や貧血の対策には鉄分!というイメージがありますが、鉄分の効果はほかにもたくさんあるのです。
そこで、鉄分の効果とは? 鉄分不足になるとどうなる? 鉄分の多い食べ物は? 効果的な食べ方は? などについてお伝えします。
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鉄分の5つの効果効能とは?
貧血といえば鉄分不足、と誰でもイメージできるほどに「血液をつくる栄養素」と知られた鉄分。
体内の鉄分の約70%は血液の中のヘモグロビンを作るために使われます。残りの約30%は肝臓や脾臓(ひぞう)に貯めておいて、必要な時に使います。
鉄分のおもな5つの効果効能とは……
- ヘモグロビンをつくって全身の細胞に酸素を届ける
- コラーゲンをつくる
- 骨をつくる
- 皮膚や粘膜をつくる
- ウィルスや細菌に負けない免疫力をつける
鉄分の効果について、もうすこし詳しくお伝えします。
全身の細胞に酸素を届ける
全身の細胞に酸素を運ぶヘモグロビンをつくるのが鉄分(ヘム鉄)。ヘモグロビンは血液のなかに存在して、全身の細胞に酸素を届けて、二酸化炭素を回収して肺に戻すはたらきをしています。
しかし、鉄分を十分に摂ってヘモグロビンを作らないと、私たちの体は酸素不足になってしまいます。
高い山では酸素がうすいために、少し歩いただけで動悸や息切れがしたり、頭痛やめまいが起きたり、思考力が低下したり、高山病になったり。
体に大きな影響を与える酸素を不足させないために、鉄分が活躍しているのです。
コラーゲンをつくる
鉄分にはコラーゲンを作るはたらきもあります。
コラーゲンのおもな材料はたんぱく質。たんぱく質が集まったところに 鉄分とビタミンCが作業をすることで、コラーゲンができあがります。
コラーゲンは、皮膚、粘膜、髪、目、筋肉、血管の壁、骨、関節、といった体の中のさまざまな場所で、みずみずしくしなやかでいられるように支えてくれています。
骨をつくる
鉄分は強い骨をつくる効果も発揮しています。
「骨をつくる」といえばカルシウム、というイメージでしょう。でも実は骨は「コラーゲン」と「カルシウム」が約1対1の割合でつくられているんです。
鉄筋コンクリートで例えると、カルシウムがコンクリート、コラーゲンが鉄筋のはたらきをしています。鉄筋であるコラーゲンがあることで、しっかりとした強い骨が作られるのですね。
そのコラーゲンの材料がたんぱく質で、作業員が鉄分とビタミンC。丈夫な骨作りにも鉄分が関係しているのです。
皮膚や粘膜をつくる
皮膚や粘膜をつくるのにもコラーゲンが必要で、そのコラーゲンづくりには鉄分が不可欠。鉄分は健康で美しい肌づくりにも大きく関わっているのです。
ウィルスや細菌に負けない免疫力をつける
ウィルスや細菌が体に入ってくるとリンパ球や白血球が戦って、感染症にかからないように体を守ってくれます。
鉄分は体を守る白血球がしっかりとはたらけるようにサポートしています。免疫力を高めてウィルスや細菌に負けない体を作るためにも、鉄分は欠かせない栄養素ですね。
※参考サイト:厚生労働省e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」、「鉄」、NHK健康チャンネル「鉄分不足による症状「鉄欠乏性貧血」とは?」
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以上、鉄分のおもな5つの効果効能をお伝えしました。では鉄分不足になるとどうなるのでしょうか?
鉄分不足になると?
体内にある鉄分は60%から70%は血液中に存在して、おもに血液の健康のためにはたらいています。
立ちくらみなどが多いと「鉄分が足りないんだわ」と思いませんか?
立ちくらみの原因には「血流不足」と「鉄分不足」があります。実は「血流不足」が原因であるケースの方が多いのですが、「鉄分不足」もやはり立ちくらみや貧血の大きな原因。
鉄分不足になると全身に十分な酸素が行き渡らなくなるので、貧血の症状があらわれるのです。
そこで、貧血をはじめとした鉄分不足の4つの影響は……
・鉄欠乏性貧血
息切れ、動悸、立ちくらみ、頭痛、疲れやすい。子供の場合、勉強への集中力の低下から成績が下がることも。
・皮膚や粘膜が作られない
シミやシワができやすい、肌にハリがなくなる、肌荒れ、ニキビ、髪の毛が細くなる、抜け毛が増える、白髪が増える、爪が欠けやすくなったり反りかえったりする。
・免疫力の低下
風邪やインフルエンザやノロウィルスなどの感染症にかかりやすい。体調をくずしやすい。
・骨がつくられない
骨粗しょう症になりやすい、骨折しやすい
このように健康面・美容面での悪影響があらわれてきます。ふだんの食生活の中で鉄分をしっかりと摂りたいものですね。
さて、食べ物に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類。でもこの2つの違い、ご存じですか?
そこでまずはヘム鉄と非ヘム鉄の違いについてお伝えして、その後で、 ヘム鉄の多い食べ物とは?非ヘム鉄の多い食べ物とは?についてお伝えします。
ヘム鉄と非ヘム鉄
食べ物に含まれる鉄は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類に分かれています。この2つの違いはなんでしょうか?
ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
ヘム鉄
肉・魚などの動物性食品に多い鉄分。溶けやすいので体内への吸収率は高い。吸収率は10%~20%ほど。
非ヘム鉄
海藻・野菜・穀物類などの植物性食品に多い鉄分。消化吸収されにくいので体内への吸収率は低い。吸収率は1%~6%ほど。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違いは大きく2つ。動物性食品と植物性食品のどちらに多いのか、体への吸収率が高いのか低いのか、の2点です。
食べ物から摂る鉄の80%以上が非ヘム鉄
私たちの食生活は「肉中心」よりも「野菜中心」。なので食べ物から摂り入れている鉄の80%以上は、野菜・海藻・穀物類に多い非ヘム鉄。
だからといって「貧血気味の人は肉中心に変えましょう」ということではありません。
ふだんは吸収率の低い非ヘム鉄も、生理中、ケガでの出血時、食べ物からの鉄分不足が大きい時などには、非ヘム鉄の吸収率がグンと急上昇するという見方もあります。
また、非ヘム鉄の吸収率をグンと高める食べ物もあるのです。
- ヘム鉄の多い肉や魚を適度にとろう
- 非ヘム鉄の吸収を高める食べ物を一緒にとろう
両者バランスよく摂ることが大切。それでは、ヘム鉄の多い食べ物とは?そして、非ヘム鉄の多い食べ物とは?非ヘム鉄の吸収を高める食べ物とは?について具体的にお伝えします。
ヘム鉄の多い食べ物
まずは、体内への吸収率が10%~20%と高めな「ヘム鉄」の多い食べ物。肉類、魚類が中心です。
・肉類:豚レバー、鶏レバー、牛レバー、豚もも肉、牛もも肉、牛ヒレ肉
・魚類:かつお、いわし、さけ、まぐろ、あじ、あなご、あゆ、あさり、しじみ、赤貝、かき、煮干し、かつおぶし
非ヘム鉄の多い食べ物
次は、体内への吸収率が1~6%と低めな「非ヘム鉄」の多い食べ物。野菜、海藻、果物、穀物類が中心です。
・野菜:大根の葉、小松菜、ほうれん草、菜の花、枝豆、納豆、そら豆、大豆、切り干し大根、豆乳、油揚げ、キャベツ、ブロッコリー
・海藻:ひじき、わかめ、海苔の佃煮
・果物:プルーン、干しぶどう、アボカド
・その他:たまご(特に黄身の部分)
1食分あたりに含まれる鉄の含有量をいくつか紹介すると……
- 枝豆(冷凍枝豆1/3袋の130g中の可食部65g):1.63mg
- 納豆(1パック40g):1.32mg
- 小松菜のおひたし(小松菜50g使用):1.40mg
- 木綿豆腐(半丁175g):2.63mg
- ひじきの煮物(乾燥ひじき5g使用):2.91mg
これらの食べ物に多い非ヘム鉄。通常は吸収率がわずか1%~6%程度の低さといわれている非ヘム鉄ですが……
その吸収率を高める食べ物があります!
そこで、次は非ヘム鉄の吸収率を高める食べ物についてお伝えします。
非ヘム鉄の吸収を高める食べ物とは?
吸収率の低い非ヘム鉄の吸収率を高めるのが、動物性たんぱく質とビタミンC。
動物性たんぱく質
動物性たんぱく質とは、肉類や魚類に多く含まれているたんぱく質のこと。
・肉類:鶏むね肉、ささみ、豚ヒレ肉、牛もも肉、牛ひき肉、たまご(特に黄身)など。
・魚介類:いわし、あじ、するめ、まぐろ、いくら、たらこなど。
肉類や魚類は、それ自体にヘム鉄が含まれていますし、一緒に食べた野菜や海藻などに含まれる非ヘム鉄の吸収も高めてくれます。
肉や魚は鉄分の補給に最適な食べ物ではありますが、コレステロールが高いという一面もあります。肉類・魚類にかたよることなく、バランスよく食べましょう。
ビタミンC
食べ物から摂った非ヘム鉄は、体内の酵素とビタミンCによって ヘム鉄に変化することで体へと吸収されます。
ビタミンCの多い食べ物は、野菜、果物、緑茶、海苔など。
ビタミンCは水に流れやすい栄養素。細かく切って水にさらしても、茹でこぼしても、ビタミンCはどんどん逃げてしまいます。
生で食べる、煮るより蒸す、スープにして汁ごといただく、加熱は短時間で、といった工夫がおすすめです。
※ビタミンCは熱に弱いとされてきましたが、最近では、家庭での調理の加熱であればビタミンCはほとんど壊れないという考えもあります。
・野菜類:赤ピーマン、黄ピーマン、ブロッコリー、ゴーヤ、じゃがいも、さつまいも
・果物類:アセロラ、グァバ、柿、キウイフルーツ、いちご、オレンジ、パパイヤ、バナナ
・その他:緑茶、焼きのり、乾燥わかめ
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生理中の出血など女性のほうが鉄分不足になりがち。そんな鉄分は美しい肌、美しい髪にとっても不可欠な栄養素です。
最近疲れやすいなぁ、貧血気味だなぁ、肌や髪のツヤが気になるなぁ、と感じたら、鉄分不足という体からのサインかもしれません。ご紹介した食べ物を参考に、バランスのよい食生活を意識してください。
鉄分の多い食べ物とその効果:まとめ
鉄分のはたらき、鉄分不足の影響、ヘム鉄や非ヘム鉄の違い、鉄分の多い食べ物などについてお伝えしました。
鉄分不足は、貧血や立ちくらみだけでなく、息切れや動悸などの健康面、シミ・シワ・肌荒れ・抜け毛などの美容面、そして骨粗しょう症などにも影響をあたえてしまいます。
鉄分不足にならないためにも、吸収を高めるよう食材の組み合わせを工夫することが大切ですね。