トリプトファンの多い食べ物や飲み物、ご存じですか?
トリプトファンとは、食べ物や飲み物に含まれる成分のひとつ。その成分を使って私たちの体のなかで、快適に生きていくために必要な物質を作っています。
やる気、意欲、仕事や勉強の能率、精神的な安定、体の健康、深い眠りなど、いろいろな面でトリプトファンが活躍しているのです。
では、トリプトファンってなに? どんなはたらき? 不足したらどうなるの? トリプトファンの多い食べ物は? などについてお伝えします。
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トリプトファンとは?
トリプトファンとは、食べ物や飲み物に含まれる栄養素のひとつで、必須アミノ酸の1種。
「必須アミノ酸って、なに?」
必須アミノ酸とは、私たちが生きていくために必要なアミノ酸であって、体のなかで作ることができないアミノ酸のこと。
つまり「生きていくために必要だけど、体の中では作れないから、食べてね!」というアミノ酸のこと。トリプトファンも食べ物や飲み物からとらなければいけない栄養素なのです。
トリプトファンは、乳製品、大豆製品、肉、魚、フルーツ、ナッツ類など、いろんな食べ物に含まれています。
トリプトファンの多い食べ物とは
トリプトファンの多い食べ物というと、牛乳やバナナをイメージする方も多いでしょう。
でも実際には、バナナよりも肉や魚のほうがトリプトファンがはるかに多いですし、牛乳よりも豆乳のほうが多く含まれています。
もっとも、健康的に生きていく上で必要な栄養素はトリプトファンだけではないので、いろいろな食べ物をバランスよく食べるのが一番!
それに、バランスよく食べていれば、トリプトファンが不足することはほぼありません。
トリプトファンの多い食べ物ばかり気にするよりも、豆、ごま、海藻、野菜、魚、肉、きのこ、穀物をバランスよく食べましょう。
そして、トリプトファンを浪費しないために、お酒の量、ストレスケア、偏食などに気をつけるほうが効果的かもしれませんね。
トリプトファンの多い食べ物
肉類:牛のレバー、豚のロース、鶏のムネ肉、鶏のもも肉
魚類:かつお、まぐろ、いわし、ブリ
魚卵類:すじこ、いくら、明太子
豆・大豆加工品:納豆、枝豆、豆乳、とうふ、味噌、しょうゆ
乳製品:牛乳、チーズ
果物:バナナ、アボカド、キウイフルーツ
食べ物100gあたりのトリプトファン
ご参考までに、食べ物100gに含まれるトリプトファンの量をすこし比べてみましょう。
1日に必要なトリプトファンの量は 『体重1キロあたり2mg』 とされています。
体重50キロの人は100mg、体重70キロの人は140mg、ですね。
牛のレバー | 290 |
豚のロース | 280 |
鶏のムネ肉 | 270 |
鶏のもも肉 | 230 |
すじこ | 330 |
かつお | 310 |
たらこ | 280 |
ぶり | 250 |
スパゲティ | 140 |
そば | 120 |
白米 | 35 |
大豆 | 520 |
納豆 | 240 |
木綿豆腐 | 100 |
豆乳 | 55 |
牛乳 | 40 |
アボカド | 33 |
キウイフルーツ | 14 |
バナナ | 10 |
バナナ100g(約1本)を食べるのはラクですが、大豆100gというのはなかなか。
肉、魚、パスタ、お米などはトリプトファンを摂りやすい食べ物ですね。
白米よりも玄米、精製された小麦よりも全粒粉のほうが、多く含まれているようです。
ではトリプトファンはどんなはたらきをしているのでしょうか?
トリプトファンのはたらき
食べ物や飲み物によってトリプトファンが体内に入ると、トリプトファンを材料にしていろんな物質が作られます。
そしてそれぞれがさまざまなはたらきをして、私たちの体と心を守ってくれます。
トリプトファンを材料にして体内で作られるおもなものがこちら。
- セロトニン
- メラトニン
- ナイアシン
では、それぞれどんなはたらきをするのか、お伝えします。
セロトニンのはたらき
トリプトファンやビタミンB6などを材料にして、体内で作られている「セロトニン」。
『幸せホルモン』とも呼ばれ、感情がおだやかにして精神面を安定させるはたらきがありますが、それだけではありません。
お通じを順調に
お腹のなかで腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進。お通じが順調に出るように、よいしょ、よいしょ、と便を押し出してくれます。
腸は第2の脳とも。腸内環境を整えることは体と心と頭の健康面でとても大切ですね。
出血をとめる
セロトニンは血液のなかの「血小板」のなかにいて、出血をしたときに血をとめるはたらきをしています。
幸せホルモンとしてのはたらき
頭(脳)の中にあるセロトニンは精神面の安定をサポート。次のようなはたらきがあります。
- 体内時計を整える
- 元気に活動できる状態にする
- 理性をもって社会的な行動ができるようにする
- 記憶力を高める
- やる気や自発性が高まる
- 勉強や仕事の能率をアップする
- 感情をコントロールする(怒りっぽくならない、クヨクヨしすぎないなど)
- ストレスに強くなる
- 依存症にならないようにする
- 痛みをやわらげる
- 寝つきや眠りがよくなる
体の面では、元気に活動できるようにしてくれる。
心の面では、クヨクヨしすぎたりしないように、怒りっぽくならないように、精神的に安定させてくれる。
頭の面では、仕事や勉強へのやる気を引き出して、能率をアップしてくれる。
セロトニンはあらゆる面で私たちの健康的な生活をサポートしているのです。
※参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」
セロトニンについてさらにくわしくはこちらをご覧ください。
セロトニンを増やす食べ物、増やす5つの方法とは?
次は、睡眠のホルモンとも呼ばれる「メラトニン」についてお伝えします。
メラトニンのはたらき
メラトニンは 『睡眠ホルモン』であり、眠りを深くするためにとても大切な物質。
メラトニンが足りないと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めてから眠れなかったりします。
メラトニンはセロトニンが変化したもの。どう変化するかというと……
朝、目が覚める
↓
日光を浴びる
↓
トリプトファンやビタミンB6など材料にして体内でセロトニン作りがスタート
↓
14時間から16時間くらいたった頃に、セロトニンがメラトニンに変化する
ポイントなのは、朝、目が覚めたら日光を浴びること!
曇りの日でも十分です。カーテンをあけて日光をあびると、その光が刺激となって体内時計がリセットされて体のなかでセロトニンを作り始めます。
朝起きて日光をあびる。セロトニンがつくられて活動モードになる。夜になるとセロトニンがメラトニンに変化して、だんだん眠たくなってきて、ぐっすり眠って朝をむかえる。
メラトニンは、
- 寝つきをよくして、
- 眠りを深くして、
- 体内時計を整えてくれる
といった大切ななはたらきをする物質なのですね。
ほかにも、抗酸化作用、細胞の老化をふせぐアンチエイジング、免疫強化などのはたらきもあります。
※参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「メラトニン」
メラトニンについてはこちらでくわしく紹介しています。
メラトニンを増やす6つの方法、効果的な食べ物とその効果とは?
ナイアシンのはたらき
ナイアシンはビタミンB群のひとつ。ビタミンB3とも呼ばれています。
ナイアシンはいろいろな食べ物のなかに含まれる栄養素でもありますし、トリプトファンを使って体のなかで作ることもできます。
糖質や脂質を分解してエネルギーを作ったり、アルコールを分解したりと、いろいろなはたらきがあります。
糖質や脂質をエネルギーに
食べ物の「糖質」や「脂質」をエネルギーに変えるはたらきがあります。
甘い物はもちろん糖質ですが、糖質のメインは炭水化物。お米、パン、麺といった私たちの主食をはじめ、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、バナナ、そして清涼飲料水やお菓子などに、炭水化物が多く含まれています。
脂質は、肉類、乳製品、ナッツ類、バター、マヨネーズ、そして油を使って作られた食品など。クロワッサン、ドーナツ、油揚げ、コーヒー用ミルクにも多く含まれています。
これらの糖質や脂質をエネルギーに変えるはたらきをしているのがナイアシン。
ビタミンB2も同じはたらきをしていますが、全体の3分の2はナイアシンによってエネルギーに変えられている、とも言われています。
血行を促進
血行を促進して、冷え性をやわらげたり、コリをほぐしてくれたりします。
肌を正常な状態に
ナイアシンは肌や粘膜の代謝もサポートしています。日焼けや年齢によるシミ・ソバカスなどをやわらげたり、肌荒れや口内炎もやわらげてくれます。
アルコールを分解する
アルコールを分解して二日酔いをふせぐはたらきもあります。
お酒を飲むとアルコールが分解されてアセトアルデヒドになります。これが悪酔い・二日酔いの原因。このアセトアルデヒドを分解してくれるのがナイアシン。
ナイアシンが十分にあれば二日酔いになりにくい。でも、二日酔いにならないためにたくさんのナイアシンが使われる。
ということで、お酒をよく飲む人は、ナイアシンの多い食べ物を食べるように日頃から気をつけましょう。
※参考サイト:国立健康・栄養研究所「ナイアシン解説」
以上、トリプトファンを使って作られるセロトニン、メラトニン、ナイアシンの3つについて簡単にお伝えしました。
では、トリプトファンが不足してしまうと……
トリプトファンが不足すると?
トリプトファンは、肉、魚、乳製品、大豆製品、フルーツ、ナッツ類などいろんな食べ物に含まれています。なのでトリプトファンが不足することはあまりありません。
ただトリプトファンが不足しやすい人もいます。それは……
- 食生活が乱れている人
- 食事面でダイエットしている人
- 偏食の人
- ストレスの多い人
トリプトファンが不足すると、セロトニン、メラトニン、ナイアシン、キヌレニン、トリプタミン、といったものが十分に作られなくなるということ。
そしてトリプトファンが不足すると……
精神面では?
トリプトファン不足が精神面にあたえる影響がこちら。
- 怒りっぽくなる
- いつまでもクヨクヨする
- 落ち込みすぎる
- うつ傾向になる
- やる気が出ない
- ストレスに弱くなる
体の面では?
トリプトファン不足が体の面にあたえる影響はこちら。
- 疲れやすい
- 疲れがとれない
- 太りやすくなる
- 寝つきや眠りが悪くなる
- 冷えやコリのある体に
- 肌荒れ、口内炎など肌のトラブル
- 二日酔いになりやすくなる
頭の面では?
トリプトファン不足が頭(脳)の面にあたえる影響はこちら。
- 仕事や勉強の能率がさがる
- 記憶力が悪くなる
このようにトリプトファンが不足すると、セロトニンやメラトニンやナイアシンなどの物質が十分に作られなくなることで、いろいろな問題が起きてしまうのです。
トリプトファンの多い食べ物と効果:まとめ
トリプトファンとは?どんなはたらきをする?トリプトファン不足したらどうなる?多い食べ物や飲み物は?などについてお伝えしました。
トリプトファンが不足しないように、浪費してしまわないように、そして、しっかりと体に吸収されるように、毎日の生活で気をつけていきたいものです。